脇町うだつ未来館

徳島県美馬市脇町にある古民家を観光交流施設として利活用する計画。 当該建物が位置するエリアは、「うだつの町並み」の通称で親しまれ、重要伝統的建造物群保存地区として指定されている。近世・近代の景観が残る町並みを一目見ようと多くの観光客が訪れるが、日帰り観光のように滞在時間が短いことが課題となっていた。一方で近年になり、町並みの景観に魅力を感じる若年層の移住者が増加し、ゲストハウスや飲食店が町並み内に少しずつ見られるようになった。こうした機運を高めながら、先述の課題解決を図るため、町並みにおける宿泊や飲食施設の滞在時間の隙間を埋める新たな消費の場として、市所有の古民家をベーカリー、チャレンジショップ、ギャラリー、コミュニティスペースなどの機能を含む観光交流施設へと転用する改修計画が立案された。 町並みに隣接する道の駅の駐車場から続く歩道を進むと、最初に目に入るのがこの建物である。町並みの中心に位置し、観光のアイコンとしてのポテンシャルを感じさせる一方で、明治25年に建てられた既存建物は、目視で分かるほどに屋根が大きく歪み、長手方向の漆喰外壁は中塗や竹木舞が随所であらわになり、構造躯体の腐朽も著しく進んでいることが見て取れた。 敷地北側の増築部に至っては屋根が地に落ち、建屋が完全に崩落する始末であった。また、敷地内部はXY方向ともに傾斜がかかり、東側の長手外壁は腰高程の石積の上に柱が載っているだけの石場建であった。加えて重伝建地区の一部を担う建物であるため、痕跡に基づく復元を原則とし、往時の外観に倣った修景が求められた。そこで、外壁を極力触らない構造補強とするため、石積の内側にXY方向の傾斜に対応した新規基礎を設け、敷地外部からの浸水防止と躯体補強の両立を図った。また、新規基礎上に土台、柱、梁を追加し、既存外壁と緊結することで長手方向の耐力を確保し、直交方向に対しては、新規柱や既存梁に沿わせる形でコの字型の鉄骨フレームを設けることで、短手方向の耐力を確保する構造計画とした。崩落していた増築部については、当初の様式を残している建屋ではないと判断し、滅失解除により重伝建地区の適用範囲から一部除外することで、周囲の景観に調和した角屋として新たに計画した。 建物外観は痕跡に基づく復元を原則とした修景が求められたが、内装は自由度の高い意匠計画が可能であったため、既存躯体を極力活かし、当初の面影を残しながらも、観光交流施設としてフレキシブルに利用可能な明るくやわらかな空間を目指した。具体的には、既存の天井はすべて撤去し、梁や小屋組みをあらわしとすることで高い気積を確保し、広々と活動できる空間とした。また、1階のチャレンジショップやパン販売スペースは一体的な空間とすることで、前面の通りから奥の中庭まで見通すことができ、建物内の活動が町並みから伺い知ることができる。 町並みの景観を形成する弧を描く蛇腹漆喰やむくりのある大屋根からは、本瓦葺と白壁の重厚な構えとは裏腹にどこか柔らかな印象が感じられる。蛇腹漆喰や丸平瓦、なまこ壁のような曲線を基調とした意匠は、ベーカリーの柔らかなイメージと調和すると考え、丸みを帯びたデザインを内装に展開した。また、階段手摺から2階腰壁の笠木へとなめらかに連続するカウンターは、空間どうしをゆるやかに接続し、建物全体に一体感を与えている。
所在地 徳島県美馬市脇町大字脇町
用途 観光交流施設(パン販売・チャレンジショップ・ギャラリー・コミュニティスペース)
建築面積 90㎡
延床面積 126㎡
工事種別 改修
担当 京 智健、有信 晴登
構造 門藤芳樹構造設計事務所
設備 中之島設計
サイン hokkyok
施工 津川組
写真 ※準備中
complete. 2024.03

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